
ユタ:南西諸島の民間霊媒師の名称の一つ。東北地方のイタコなどに類似して死者の魂の口寄せを行う他、悪霊や生き霊などの祓い、失せ物占い、新年の運勢を占い、新築・改築などの風水相談などを請け負う。
敗戦後米軍の占領下にあり、まだ地元に戻ることができない祖父母一家は、いくつかの家族と同じ避難先で生活をしていた。
その隣に、とても嫉妬深く性格の悪いユタCが住んでいたそうだ。
やれ誰かが新しい着物を着ていただの、やれ畑の収穫量が少し多かっただの、本当に些細なことが彼女の癇に障るらしく、その都度相手に生き霊を飛ばして嫌がらせをするのであまり好かれてはいなかった。
殊に祖母は、隣ということもあって何かにつけ言いがかりを受けやすく辟易としていた。
当時、祖父母とユタCはそれぞれ豚を飼っていたのだが、祖父母の飼っていた母豚は多産で子育てが上手く子豚をよく育てるので大変助けになっていた。
一方でユタCの飼っている母豚は少ない子豚を自分の体で押し潰してしまうことが多く、そのことで嫌味を言われることもあったそうだ。
祖父母の飼っている豚が出産を迎えたある日のこと、一匹二匹はいつも通り安産で進んでいたところ、途中から母豚が悲鳴のような鳴き声を挙げて、そこから突然難産になってしまった。
子豚を取り上げていた祖父は、母豚の腹をさすってやりながら、
「これはただ事ではない」
と、言った。
ユタや神人ではないものの、霊感の高い生まれをしていた祖母は、祖父の言葉に頷きながら応えた。
「これはかかりものだ」
その時何が”視えた”のか、祖母にはすぐに隣のユタCの生き霊だと判ったという。
「このままでは母豚ごと死んでしまう」
「急いで誰かユタを呼んでこよう」
「待って。隣のあのユタくらいなら、私でも”外せる”はず」
そういうと祖母は鎌や鉈やらを取り出して何事か拝み言葉を唱えた。
生き霊を追い払うのには「刃物」と「悪口」が有効だと後年母が言っていたので、おそらくそういった類のことも含まれていたのではないかと思う。
しばらくすると、母豚の呼吸が元に戻り、また上手に子豚を産みはじめたので祖父母は顔を見合わせて安堵したそうだ。
翌朝、無事に全ての子豚を産み終えた母豚に祖母が餌を持っていく途中、
「よく返したね」
と、ユタCは恨みがましそうに言ってきたので、祖母は「やっぱりこいつだったか……」と思った。
祖母に生き霊を返されて何かあったのか、しばらくは大人しかったユタCだったが、結局避難所が解散になるまでその嫉み嫉みのひどい性格は変わらなかったという。
「出典:まつゆき綾のそんなに恐くない話(http://riccaren.com/)」の記載、もしくはその旨の言及をいただければ、Youtubeや怪談会などで実話怪談・不思議な話としてお話いただいて問題ありません。
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